日本学術会議を国策協力の御用機関にしてはならない
−「日本学術会議の在り方についての方針」(2022年12月6日公表)に対する抗議声明−
2023年1月8日 社会主義理論学会 PDF版
内閣府は2022年12月6日付で「日本学術会議の在り方についての方針」(以下、「方針」)を公表した。
日本学術会議は「日本の科学者の内外に対する代表機関」(『大辞泉』)と説明されるが、これまで世間一般に広く知られているとは言いがたかった。ところが、近年突如として「注目」される存在になった。周知のとおり、2020年10月に当時の菅義偉首相が、日本学術会議が推薦した6人の新会員候補者の任命を拒否したためである。日本学術会議法第7条は「日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員〔略〕をもつて、これを組織する。」と定める。従って、今も会員数は204人のままなので違法状態が続いている。
政府は任命拒否の理由を明らかにしないまま、任命を拒否されるような候補者を推薦する日本学術会議に「落ち度」があると問題をすりかえた。菅首相の「英断」をまさに奇貨として、政府・与党は日本学術会議への不当な攻撃を展開してきた。今回の「方針」もその一環にほかならない。
「方針」は五つの大項目を立てて、八つの具体的項目を提言している。その前に長い総論的な説明文が付されている。そこで重要なのは、「政府等と問題意識や時間軸等を共有」することを日本学術会議に求めている点であろう。「方針」には同趣旨の表現が4回登場する。要するに、国策に協力する御用機関に成り下がれと暗に命じているに等しい。説明文は「日本学術会議においても、新たな組織に生まれかわる覚悟で抜本的な改革を断行することが必要である」と結ばれている。学問の自由と独立を尊重しない政府の方こそ「生まれかわる」べきであろう。
具体的提言項目にも政府の見識を疑う文言が並んでいる。具体的提言の第1項目には「会員等に求める資質等も明らかにする」とある。ここには思想審査が含意されていると読むことができる。その第5項目の「国の機関であることも踏まえ、選考・推薦及び内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」も同じ文脈に相違あるまい。「国の機関であること」を基準に任命時に思想審査を行うとの意味だとみなされる。
そして、具体的提言の最終第8項目に掲げられた「必要があると認められるときは、国とは別の法人格を有する独立した組織とすることも含め、最適の設置形態となるよう所要の措置を講ずる」に至っては、〈「方針」に従わなければ解体する〉と威嚇していることは明らかだ。
今回の「方針」は日本学術会議の「抜本的な」変節を強要するものである。「俯瞰的・分野横断的」「高い透明性・客観性」「国際的な業績・評価」などの美辞麗句はその本質を空疎に潤色しているにすぎない。
社会主義理論学会は会則第3条に「自由に研究すること」を会の目的として掲げている。そこからして当然、「学問の自由」を保障する日本国憲法第23条に違反する上記の性格をもつ「方針」に対して強く抗議する。
以 上